ヘタレ攻略日記その16

メタリン

父さん…、父さん…、父さん!
僕、やったんだ…。とうとうやったんだよ!この気持ち、父さんにはわかってもらえるかな。僕のこの喜び、どこまでわかってもらえるかな!?


とうとう、とうとう僕はあの彼女、メタリンちゃんを口説き落としたんだ!口説き続けても全く色好い返事が貰えなくて、苦肉の策で「押してダメなら引いてみる作戦」を決行したんだけど、どうやらこの作戦が功を奏したみたいなんだ。そろそろ会いに行っても良い頃かなぁ…どうかなぁ…、なんて弱気になりながら、僕は彼女と何度デートを重ねたか手帳で調べたんだ。僕、マメだからそういうのちゃんと印つける人だから。そうしたら今までに彼女とは90回近くデートをしていたんだよ。彼女にとっては90回会ったくらいで調子に乗るんじゃないわよ、という気分だろうけど、僕にとって彼女と90回会うのはすごく大変なんだよ。他のすぐにデートに応じるようなどうでもいい奴らとはまず格が違うだろう?それにね、彼女の場合はすぐ「あたし、つまんないから帰る!」って、僕を置いて帰ってしまうんだ。デートはこれからだろっていう時に。
そんな中の90回だ。これだけでも他と違って結構大変なのは父さんにも少しはわかるだろう?でも僕もこの程度のデートじゃ彼女が落ちてくれないのは十分わかってたからさ、せめてこのデートの回数を少しでもいいから増やそうと思ったんだよ。彼女の顔が見たかったしね。


そしたらね、妙に彼女、デートに応じてくれるんだ。僕、少しは見直してもらえたのかな、やっぱり突然僕が目の前から消えて、彼女も少なからず気にしてくれてたのかな、なんて、そんな事を考えるだけで嬉しくなった。デートの回数も増えたし本当に満足してたんだよ。印つけながら「あとどのくらい頑張れば良いのかな。楽しみだなぁ」なんて彼女との幸せな未来に思いを馳せながらね。
そしたら父さん、聞いてくれよ!僕はハッキリと覚えてる。僕にとっては毎回が記念なんだけど、記念すべき116回目のデート。場所はメダル王の城の近くの海岸で、空はどこまでも青く澄み渡り、心地よい日差しが僕らを包み込んでくれていた。絶好のデート日和だった。デートを終えて、さて、次、次、と思っていた僕に、ふいに彼女が「帰りたくない…」って!「ずっと一緒にいたいの…もう私の前から消えたりしないで」って!!
父さん!父さんも男ならこの僕の気持ちをわかってくれよ!


僕は叫んだよ。まさかこんなに早く彼女が振り向いてくれるとは思ってもみなかったからね。勢い余って思わずすぐに「うん!これからはずっと一緒だ!」と言いそうになったけど、僕は彼女に惚れてずっと嫌われっぱなしだった時、いつか彼女が振り向いた時は逆に焦らしてやるんだと決めていたんだ。それを忘れずに今日まで来た僕はちゃんと「えー…、どうしようかな…」とシラッと言ってやったよ。「じゃぁ返事くれるまで寝てるわ」と余裕こいて寝られたから慌ててOKしたけどね。


今彼女は僕の馬車の中で楽しそうに旅を満喫しているよ。メタルボディの彼女は素晴らしいよ。他の仲間には内緒で隠し持っていた僕のおやつ、じゃがりことポテコをあげたもの。いらないって突っ返されたけど。今までいろんなくだらない奴らに手を焼いてきたけど、こんな最高の彼女を予想以上に早くゲットできたんだ。僕はとても幸せ者だよ。これはもう僕の執念の勝ち。こんな自分がどんどん怖く不気味に感じるけどね。
そんなわけでビアンカにはちょっぴり申し訳ないけれど、僕は今とてもハッピーなんだ。これでますます旅にも力が入るってものだよね。
でも、僕ってちょっとアレでさ、手に入れちゃうとすぐに他の違うターゲットが気になりだしちゃうんだよね。で、今の僕のターゲットは水分たっぷりのメタルボディを輝かせて世の中の男達を魅了してやまない、はぐりんだ。今の僕が口説けるターゲットはもうこの子しかいないしね。ただこの子とはまだ24回しかデートしてないからね、相当苦労するとは思うけど、時間はまだまだたっぷりあるんだ。じっくりじっくり口説いていくことにするよ。


え?あー、旅の経過?それはは明日書くことにするよ。今日はメタリンのことで頭がいっぱいなんだ。ごめんよ父さん。こんな息子を持ったこと、少し後悔してるかい?