ヘタレ攻略日記その21

父さん、今日はエビルマウンテンに行ってみたよ。どうやらここの中枢に僕の最大の敵、…えーと、ミ…ミ…、えっとなんだっけな、セルロースとか、ラードとか、ちょっとそんな感じの名前のヤツがいるらしいんだ。
この日は対決するつもりはなかったんだけど、相手がどんなヤツなのかまったくわからないのは不安じゃないか。だから柱の陰に隠れてそっと覗いてみるつもりだったんだ。要は偵察だよ。
内部は随分と入り組んでいて、どこまで進めば僕の敵がいるのかまったく予想がつかなかった。それでもとりあえず奥へと足を運んでいたのだけど、僕、ひたすら歩くだけだからちょっとぼんやりしてたんだよね。うっかり腕が蛇の男達に見つかってしまった。
あー!と思って逃げようとしたんだけど全然無理で、そのまま戦うことになってしまって動揺したよ。だって、ロクに体力とか回復してなかったんだもの。でも、そいつらの背後に、僕らの、父さんと僕らの大事な母さんの姿があったんだ。僕、それで頑張ろうと思った。


男達は想像していたほど強くはなくて簡単に倒せたよ。ほっとしながら急いで母さんの元へ近づこうとしたんだ。そんな僕らに母さんは言ったよ、僕がここまで強くなったこと、驚いていた。でも、それが母さんにとって嬉しいのか、悲しいのか、わからない表情だったよ。そして、僕らが来るところまで来てしまったのなら、と、何か意を決したようだった。
そこでまたアイツが現れたんだ。ストーカーのように要所要所で現れるオカマだ。もう、本当に僕はアイツとは顔を合わせたくないというのに。オカマはとうとう全力を出して僕らとの戦闘を挑んできた。僕はね、ここでまた動揺したよ。本当にそういうの、するつもりじゃなかったから。今日の予定にはなかったから。


でももう逃げることなんてできないし、母さんをそのままにしておくわけにはいかない。僕らは必死で戦った。本気のアイツはものすごく手強かったよ。今までの戦闘は相当手加減されていたのがよくわかった。
しまいに僕らはかなり劣勢になってしまった。ことごとく仲間たちがしびれて動くことができなくなってしまったんだ。皆、僕の横でピクピクしてて、馬車にいる仲間と交代しながらヒソカが懸命にキアリクという呪文で麻痺を治していたんだけど、そのヒソカもとうとうヤツの手によって動けなくなりピクピクピクピクしてしまった。
僕は毒を治すキアリーしか唱えられない。もう終わりだ…、そう思った時、ベホマンの一撃でヤツを倒したよ。
最後のパーティ、僕とイルミとベホマンとメタリン。メタリンはメタルスライムの剣を持ってるだけだったし、ベホマンなんて何ひとつ装備していなかったのに、よく素手で立ち向かってくれたとその勇気に感謝しているよ。


こんなギリギリだったけど、ヤツは倒されたことを悔しがりながら跡形もなく消え去った。今度こそ母さんの所へ行って助けなきゃ…と、思ったその時。やっとの思いで息をしている母さんが、また、父さんと同じように僕の目の前で…。
僕は自分の両親の最期を、どうしてこんな形で見届けることしかできないんだ。僕は初めて自分の運命を呪ったよ。僕ら家族が選ばれた者でなければ、こんな戦いも、こんな死を迎えることもなかったのに!
でもね、僕はもう覚悟を決めたんだ、何があっても逃げないと決めたんだ。父さんも母さんも、自分の意思で自分の運命と向き合っていたんだものね。僕らよりもっと辛いことだって、一度たりとも泣き言を言わずにいたんだものね。僕はもう父さん母さんの息子というだけじゃない。今はビアンカの夫であり、ヒソカ、イルミの父親なんだ。今度は僕が、父さん達のようにならなければならないんだから。


そして僕らは先へ進んだ。聖なる水差しを使って中へと進んだんだけど、僕、ここでちょっと思ったんだ。
あのオカマ野郎だって僕の宿命の敵の手下なわけで、でもあれだけ強かった。たぶん、今の僕じゃ勝てないんだ。今回のようにベホマン、メタリンが残ったって勝てやしないんだ。それにね、道すがらまた可愛いターゲットを見つけてね、うん、だから、これ以上先に進むのはもう少し魔界を堪能してからにしてみる。